村岡昌憲の釣行記。東京湾のシーバスからその他節操無く色々と。

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Area13 - Stage3 〜接近、そして激闘 〜

2006年10月12日 湾奥干潟

 

 

この日を待っていた。

後中潮の最終日。

会社の終業のチャイムと同時に車を走らせる。

 

 

オキと干潟へ向かう。

狙うは満潮から下げの勢いが増すタイミング。

満ち満ちのシャローにはエビがたくさんいて、それを食べたいサッパやイナっ子、そしてその小魚を狙うスズキという構図が見事にできあがっていた。

 

 

絶妙な位置のバランスで睨み合う展開。

息を殺して難が去るのを待っているのはサッパだ。

イナっ子は水面を揺らしながら、群れで同じ一帯を回遊し続ける。

しかし、そのシャローから潮が流れ落ちていくブレイクには近寄ろうともしない。

 

オキには好きなように釣りしてて、と頼んだのだが、彼もまた超弩級一本に狙いを絞っているようだった。

二人してキャストもしない時間が、しばらく続く。

音は、遠くの車の騒音だけ。風も弱く、静かな時間が淡々と過ぎていく。

 

たまに突っ立っていて、肩が凝るのをほぐすように、キャストをし、ブレイクの近くを泳がせるが反応は何もない。

 

 

 

 

 

 

30分近く経っただろうか。

まるで何かを思い出したかのように、止まっていた潮が、動き出す。

明確な意志が、ベイトフィッシュに覚悟を求める。

4時間後には確実に干上がる、そのサンドバー。

動物プランクトンから、ベイトフィッシュ、そしてスズキまでもが、その決して逆らえない海の掟に従い、そしてその中でたくましく生きている。

 

 

 

食物連鎖の頂点、スズキ。

超弩級はきっとここだ。

僕は確信を持った。

 

 

むやみやたらにキャストせずに、数分に一投の割合で、しかしその一投は全身全霊でレンジとコースを意識してシーバスを誘う。

ネオンナイトに操られるプラグは、確実に情報を集めて、ラインを通して伝えてくる。

 

知りたいのは、ベイトの気配。

動きではなく、気配。

フィールドに長くいないと決して知り得ない概念。

森羅万象に取り込まれないと決して感じ得ない感覚。

 

 

 

やがて時合がやってきた。

並んでいる遠くのアングラーが魚を掛けた。

魚はまずまず大きそうだった。

しきりにフラッシュをたいていたから、Web持ちかな?

 

 

すぐにオキもまた魚を掛ける。サイズは60止まり。

スズキの群れは完全に流心のヨレの中。

 

 

もちろん気にはなるが、当然無視だ。

超弩級が出ると確信したサンドバーは流心より一つシャロー寄り。

そこを下がった位置から撃ち続ける。

 

 

サンドバーのトップで、いきなりイナっ子が混迷の泳ぎを始めた。

来てるぞ!

 

 

この瞬間、この気配。たまらない。

ビリビリと伝わってくる、超弩級の気配。

あとはレアフォースを喰わすだけ。

 

オキも気配を察知したのか、少しポジションを下げた。

二人とも膝くらいまでしか立ち込んでいない状態。

 

 

サンドバーのブレイクを挟んで、スズキとイナっ子の膠着状態が続く。

派手にライズするときはするが、しないときはしない。

なぜだか未だに解らないが、こういう時間がある。

にらみ合い。生き残りを掛けた必死の闘い。

その眼前で、スズキのみを狙う、男二人。

 

 

 

しかし、喰わせられない。

すぐに気配が消えてしまう。

イナっ子が、解放されたことを喜んでいるかのようにピッチャンと水面を飛ぶ。

ラインにイナっ子がコンコン当たるようでは、ダメである。

しばらくキャストをやめる。

 

 

膝立ちで正座しながら話し込むこと20分くらいか。

 

オキの笑い話に、ケタケタ笑っていたときに突然訪れるこの感覚。

耳の後ろに鳥肌が立つ、あの感覚。

 

知っているから立つんである。

過去に経験をしているから、この感覚が来るのである。

 

 

 

 

 

 

再び、超弩級の接近の気配

 

 

 

 

 

イナっ子がまた群れを組み直して、サンドバーの上に集まって固まる。

 

 

 

 

来てるぞ。

 

オキにだけ聞こえるように、そしてそっとつぶやく。

 

 

立ち上がって、レアフォースを流心にめがけてフルキャストする。

流心際から、サンドバーにレアフォースを泳ぎながら差し込ませる。

まるで、群れに戻るのに遅れたイナっ子が一所懸命にサンドバーに向かって泳いできたかのように。

 

 

 

出ない。

 

 

 

さっきもそうだが、レアフォースで出ないとなるとレンジに違いがあるのか。

水面か。

 

前だったらハンマーだっただろう。

しかし、今は封印中である。

 

ポジションを上流側に変える。

オキの得意なコースだったが、無理矢理割り込ませる。

 

 

ほとんど思いつきだった。この日、たまたま持ってきていた原工房ブーツ120に変える。

サンドバーの瀬尻をほとんどリールを巻かない激デッドスローでじりじりと後ろに流していく。

まるで、サンドバーで群れとして泳ぎ続けることができなくなった、弱者のように。

 

 

 

2投目だった。

 

 

 

 

ザバァッ!

 

 

ふとレアフォースの下流から、泳いできた大きなものが覆い被さったように重なり、重厚な衝撃が手元に伝わる。

衝撃、とは違う感じで抑え込まれたネオンナイトの鬼掛けティップに、特に僕は何もすることが無く、向こう合わせでフッキングすると、ヤツは一瞬、その場で止まった。

 

水面近くを泳いでいたエイと事故的にぶつかってしまったときと似ている。

 

 

 

エイ????

グググッとロッドを立ててテンションを上げると、異変に気付いて一気に走り出す。

ネオンナイトの強靱なバッドがきしみ音を立ててねじ曲がり、ドラグが悲鳴を上げながら糸を吐き出す。

 

すごいトルク。

が、エラ洗いはない。

 

 

圧倒的な重厚感はエイに似ているが、走った一瞬のスピードでわかる。

 

エイではない!

 

 

 

ファイトは一進一退を極めた。

魚の泳ぎから判断して、フッキングの位置が、オデコか口の下。スズキにとって縦のラインにテールフックだけが掛かっている状態。

フロントフックは外れたのだろう。

完全に、魚側にアドバンテージのあるフッキングポジション。

なかなか頭の向きを変えることが難しく、かつ魚もバテない。

浅瀬に誘導しようにも、あっさりと流心に突入し、流れの力も使って、どんどんとラインを出していく。

たまらず、流心に僕も引きずりだされ、距離を詰めるべく、ドラグを締めながらのファイト。

 

ネオンナイトにできることはネオンナイトに。

 

 

 

5分ほどかかっただろうか。

スズキで5分かかるファイトはそうあるものではない。

 

 

未だに一度もエラ洗いをしないヤツに、こっちは間違いなく確信を持っていた。

 

 

80UPの確信である。

 

慎重にならざるを得ない。

 

 

サポートもかねて、近くにいたオキの前で、ヤツは苦しそうに、魚体を傾けながら水面に出てきた。

 

 

 

オキ! 魚見て!

 

 

 

 

ライトを付けたオキが、普段の3倍の大きさで目を開いて、口をぱくぱくさせている。

ムチャクチャでかいぞ!!

 

 

 

自分の上流側にロッドで誘導して、膝くらいの流れの緩いところに誘導していく。

何度かまた走ったが、それをいなして一気に距離を詰めてリーダーを持つ。

 

 

 

ボガは使わないんだ。

 

 

 

東京湾の神に最大限の敬意を

 

 

 

 

 

ハンドランディング

 

 

 

 

左手に確かな感触を感じた瞬間、身体中に喜びがはじけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会心の1本!!

 

 

 

 

 

 

浅瀬に行ってメジャーを当てる。

 

 

 

 

95センチ!!!

 

 

 

 

岸から上がるとき、海に向かって両手を合わせた。

 

一度は達しかけた世界がある。

 

一生のテーマである、神の一投。

 

そこにはまだ戻る事も、垣間見ることもできない。

 

 

しかし、その道をまた歩んでいきたいと心から思い、

そして豊かな東京湾の自然に心から感謝の気持ちを持って、祈ったのであった。

 

 

 

 

使用タックル
ロッド

アピア 風神ゼータ83L ネオンナイト

リール ダイワ セルテート3000
ライン 東レ シーバスPE 1号
プラグ


アロウズレアフォース

ゴミ ペットボトル

 

 



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